Category Archives: 本

カシコギ

kashikogi.jpgカシコギ

以前出口のない海で書いた言葉はこの作品の引用である事を知り、
前々から読んでみたいと思ってた。
ネットのレビューを読んでも評判がよく、
感動するらしいので期待して読んでみた。


なのだが、
んー、なんか違う…。
確かに親子の強い愛情は感じるし、
その絆は感動に値するのだけど
個人的にはどうも納得できない部分があった。
それが「自己犠牲」と言う部分。
この作品で父親は自分の息子を救おうと
自分を犠牲にしてまで尽くすのだが、
自己犠牲ってエゴなのではないかと僕は思う。
「その人が救われるなら」と自分を捧げた人は満足かもしれないが、
救われた方は、誰かを傷つけたと言う重荷を背負う。
例えば臓器移植なんかは、
提供した方にも何らかの障害が出る可能性がある。
そうなった場合、提供された方は非常に心苦しくなるのでは?
自分を犠牲にしても救いたいと思うのと同様に、
相手も誰かを傷つけたてまで助かりたく無いと想ってるかも知れない。
確かに人を救おうとする行為は素晴らしいが、
それしか選択肢がない場合もあると思うが、
共に助かる道が最善な道なのではないのだろうか?
この父親には別の選択肢もあったと思っている。
なので僕はそこまで感動できなかった。


まあ、僕は冷めた所があるので、
大概の人は感動するのではないかと思います。

ラッシュライフ

rashlifeラッシュライフ

伊坂幸太郎作品、これで3つ目。
四人の人物を中心とした群像劇。
全く共通点のない人達の人生が、
時に交わり関わり互いに影響を及ぼして、
そしてまたそれぞれの人生に戻って行く。
話の場面が次々に切り替わり、
またその場面毎の時間軸もずれてるので頭を使う。
それぞれの話でリンクしてる部分もあり、
間を空けてしまうと多分気付かずに見落としてしまうかも。
でも展開が面白くて一気に読んでしまったのでその心配もなかった。
誰もが人生という物語の主人公であり、
誰かの物語に主要な人物、または脇役として登場している。
そして時に微少に、時に多大に影響し合っている。
こういう人生論はよく耳にするけど、
まさにそれを感じさせてくれる作品。
伊坂幸太郎はこの作品の中だけでなく、
他の作品と作品でもリンクしている。
前に読んだ「重力ピエロ」の登場人物が今作では
主要人物として登場してた。
作品同士のリンクで僕が思い浮かべるのはスティーブン・キング。
彼は架空の街を作り上げ、そこで起こる事件を幾つも作品としてる。
だからスタンド・バイ・ミーとショーシャンクは同じ街が舞台だし、
ショーシャンク刑務所は他の作品でも頻繁に出てくる。
ミザリーの小説家が他作品で、有名な小説家として名が挙げられたり。
こうやって一つの場面で幾つも作品が生まれると、
その世界をよりリアルに感じられるし、
物語同士のリンクを発見するのもちょっとした喜びになる。
こういう世界観作りは好きだな。
スティーブン・キングの作品同士のリンクに関しては
半分くらい請け売りだけど、
そのうち自分の目で確認したいと思う。

博士の愛した数式

博士の愛した数式博士の愛した数式

博士と家政婦とその息子。
この三人の作る雰囲気がとても温かい。
一生を数字捧げた博士。
世間一般的に見れば奇人・変人である。
でもそういう人ほど純粋で正直なのだと思う。
だから博士をよく知る人は段々とその人柄に惹かれて行くのだろう。
博士が数字に魅せられる気持ちも分かる。
一見無秩序に見える自然法則も秩序の上に成り立ってる。
自然界におけるフラクタル黄金比との関係性などを知ると
やはり神秘性を感じる。
「神のノート」とは上手い表現だ。
(自然界の黄金比はダヴィンチ・コードでも出てくる)
博士のような人が学校の先生だったら、
もっと数学に取り組む生徒が増えるのでないかと思う。
ゆとり教育と言うけど、
そのゆとりを興味を持たせる方向に使って欲しいと思う。
でないと将来の日本が心配だ。
どうなるゆとり世代の学力
周知の事実だが、この作品は映画化されてる。
メインキャストは寺尾聡、深津絵里。
是非映像で見てみたい。

いわゆるA級戦犯

251a68aa.jpgいわゆるA級戦犯

この時期になると、靖国神社やA級戦犯などをよくメディアで目にする。
A級戦犯とは戦争により平和を乱した者であり、
法により裁かれた犯罪者。
そしてBC級よりも罪の重いものがA級戦犯。
…そう思ってた。
学校で学んだ事は一体何だったのだろうか?
僕は何も知っていなかったのだと気付き愕然とした。
学生の頃は、”我、関せず”で歴史も社会情勢にも
全く興味がなかった。
まさに自分さえよければ、の感覚。
社会も英語も嫌いで、それが理系を選んだ一つの理由。
なので結局のところモノを知らずにここまで来てしまったが、
それが今では逆に多くの事を知りたいと言う欲求に変わり
この本を手に取る事となった。
世の中には正しいと思っていても、
真実と異なる事はたくさんあると思う。
もっと多くの真実を知りたいと思った。
そして情報の取捨選択の出来る目を養いたいと思う。

出口のない海

出口のない海出口のない海

連日ニュースを賑わすイスラエルとレバノンの抗争も、
世界30カ国の37ヶ所で戦争が起きてる事実も
どこか違う世界の気がした。
今の日本があまりに平和だから。
でも今からたった60年近い昔に
確かにこの国でも戦争があり、
死がすぐそこにある、そんな時代があった。
喜んで自ら国の為に命を落とせる事に
今まで理解できずにいたけど、
その気持ちが少し分かった気がした。
たまたま耳にした言葉が
偶然にもこの作品と重なった。
「あなたが空しく生きた今日は、 昨日死んでいった者が、
あれほど生きたいと願った明日。 」

ZOO<2>

d96f4ec9.jpgZOO<2>
前回のZOO<1>を読んだ時に
コメントでZOO<2>も面白いと聞いたので
早速読んでみた。
今のところ乙一の作品はどれも好き。
ダークなんだけど、
後味が悪くないんだよね。
しかし乙一は発想力が豊かだと思う。
このZOOにしろ、一話毎の内容が全然異なる。
ミステリー、ホラーあり、ちょっと切なさあり、
シュールさもありで一言でこんな本とは説明しにくい。
あ、でも殆どの話で必ず人が死ぬ(もしくは死んでる)。
だから僕の中の乙一のイメージは黒。
でも漆黒の闇のような黒ではなく、
見とれるような黒かな。
ちなみにZOO<2>のお気に入りは、
「冷たい森の白い家」と「Closet』。

重力ピエロ

635d5582.jpg以前、友達から伊坂 幸太郎の「アヒルと鴨のコインロッカー」を借りて、
面白かったので同著者の「重力ピエロ」を読んでみた。
どこにでもありそうだけど、
どこにでもない家族の話。
まだ二作しか読んでないが
伊坂 幸太郎の作品には魅力的な人物が登場する。
今作の家族も一人一人が魅力的で、
中でも一際異彩を放ってるのは弟の春だと思う。
だけど僕は春よりも父親に惹かれた。
素朴だけど内に強さを秘めて愛に溢れた人。
かっこいいと思った。
偉大だと思った。
家族・兄弟・絆・性・正義・社会・倫理、
とまあいろんな要素が見事に入り混じった物語だが、
僕はただ単純にこの父親に惚れた。
そんな人間になりたいと思った。

空中ブランコ

fde657a9.jpg奥田英朗の「イン・ザ・プール」が出版された時、
装丁と帯のコメントに惹かれいつか読もうと思った。
そして先日、ようやく読む事となった。
丁度その時、
職場の仲間が奥田英朗の作品を読んでるのを知り、
自分が「イン・ザ・プール」を読んだ事を話したら
続編である「空中ブランコ」を貸してくれた。
この作品も一話完結なので、
だいたい一日一話のペースで読んだ。
「イン・ザ・プール」を読んでる時は、
「こんな医者ありえないだろう」と言う伊良部の常識外れな行動、発言に
おもしろおかしく読ませてもらった。
けど続編となり何度も伊良部の話を読んでるうちに、
少し飽きてしまった。
まあ、飽きたと言うよりは慣れてしまったのかな。
「もうこいつはどうしようもないやつだな。考えられない!」から、
「まあ、こいつならしょうがないか。」
へシフトした感じ。
あれ?これってつまり僕もいつの間にか伊良部のペースに
巻きこもれてしまったと言う事だろうか?
なんかこういう人間には勝てない気がする。
と言うかまともに勝負してはいけない気がする。
けど、実際に近くにいたらウザと思う事は間違いないが。
今、第三弾の「町長選挙」が書店に並んでるが、
これを読むのはしばらく保留かな。
変人は時々会うから面白い。
ちなみにこの三冊の装丁って、
必ず左上に赤ん坊がいるね。
こういう連続性っておもしろい。

GOTH 夜の章

1d7dc214.jpgGOTH 夜の章
前回のGOTH 僕の章から続けて、
前編であるGOTH 夜の章を読破した。
前編は全三話だが、
どれも一気に読み切ってしまった。
この作品は一人称の使い方が特徴的だと思う。
そう気付いておきながら、
「犬」は素直に騙されてしまった。
上手く引っ掛けられると気持ち良いものである。
ちなみに「暗黒系」の猟奇殺人が一番グロいと思う。
朝一からリアルに想像してしまった…。
後半を先に読んでしまったが、
一話完結なので特に気にならない。
前編の話と関係してるだろうと思われる部分もややあったが、
それはそれで前編を読んでる時に、
「ああ、ここでこのシーンが出てくるのか」
と言った感じで楽しめる。
過去に何かあったであろう雰囲気を匂わせといて、
読者はあれこれ想像を巡らせる。
そして最後の最後で実は過去にこんな事が…と告白。
丁度そんな感じである。
意外と後半を先に読んでしまうのも、
楽しみ方の一つかも知れない。

GOTH 僕の章

b25f4378.jpgGOTH 僕の章
前回読んだZOOに引き続き
乙一作品を読んでみようと思い、
背表紙のコメントに惹かれて選んだのがGOTH。
これまたのめり込んでどんどん読み進めて行ったんだけど、
一向にコメントにあったような話は出てこない。
途中でようやく気付いたんだけど、
このGOTHは前・後と二冊あるらしい。
コメントが気に入ったのは前編の方で、
僕が実際に買ったのは後編の方。
嗚呼、勘違い…。
ただ、登場人物は同じなんだけど、
一話完結なので後編から読んでも問題なく楽しめる。
主人公の僕と森野夜のキャラに、
微妙な距離感が良い。
三話目の「声」は小説ならではのストーリだと思う。
映像では実現不可だろう。
後編を読んだら、前編も読まないと。
そういう訳で早速今日の帰りに買って来た。