アクト・オブ・キリング

※ネタバレあり

とにかく全てが衝撃的だった。

これが本当に今の時代の映像なのだろうか。
登場する人物の考え方だけでなく、社会全体の常識や考え方が異常に思えた。

人を殺したことを武勇伝のように話す人たち。
殺人者を咎めることなく受け入れる社会。

「殺す」という言葉がリアルであり、
それがテレビのインタビューでも普通に取り交わされてる。
どこの世界の話だ、これ。

彼らにとって「人を殺す」こととはどういうことなのだろう。
僕の中の「人を殺す」の重みとは全く違う。
彼らにとって人を殺すのは、虫を殺すのと同位かも知れない。
どうやって殺したか、だの嬉々として語ることからそう感じてしまう。

宗教戦争なんかでは、
お互いが自分達が正しいと思っていて、それが交わることができずに争いが起こる。
ただ、それぞれには信じる宗教があり自分は正しいという信念の上で行動している。
これは何となく気持ちは理解できる気がする。

でもこの映画に登場する人物にはどうにもその信念が感じられる人が少ない。
自分の私欲とか快楽のために殺人を犯した人が多いような気がしてならない。

狂気ですわ。

しかもみんな一見、いい人そうに見える。
でもきっとどこか頭のネジが外れちゃってるのだろうな。

そんな中アンワルは自分の犯したことの重さに気づき始めたっぽい。
彼が過去を思い出して吐き気をもよおすシーンは、
過去にホントに罪を犯した人でしか出せない表現だろう。
というか、人が過去の罪に向き合うとこんな感じになるのかと知った。

でもこの作品を通じて、ここまで過去に向き合ったのはアンワルだけだろう。
他の人物は距離をおいたまま。
おそらくそれがいいのだと自分達でも感じてるかもしれない。

とは言え、それ以外の殺人者たちが全員過去の罪に向き合うことはないのだろうと思う。
そして強者として弱者から搾取して悠々自適な生活を送ってくのだ。

この作品が捉えたのは大量虐殺の事件のごくごく一部でしか無いと思う。
きっとこの問題はもっと根が深くまだまだ長く尾を引きそうだ。