『アリス・クリードの失踪』公式サイト
あらすじ
ヴィックとダニーは富豪の娘アリス・クリードを誘拐すると
用意したアジトに連れ込み、手足をベッドに縛り付け監禁する。
身代金の要求額は200万ポンド。
ヴィックが周到に練り上げた計画は万事抜かりなくこのまま順調に進むかに思われたが…
感想
全体を通して一定の緊張感が保たれてて飽きることなく観れた。
終わってみれば登場人物が主要の三人だけと
低予算ながら綿密に世界観が作られてる。
低予算を狙ったのか、結果的に低予算になったのか分からないが、
たった数人の登場人物でもこれだけの映画が撮れるという好例。
※以下ネタバレ
とにかくダニーのダメっぷりが凄い。
彼が全ての元凶であり、
また彼がいなければこの誘拐は成功してたかも知れない。
「愛してるから誘拐した」とか撃たれても可笑しくないレベル。
まあ、彼がいたからこの映画が成り立つのだが…。
この映画では暴力シーンが殆どない。
簡単には暴力は使わない。
だがその境目は非常に薄い一枚の板で、
一歩間違えればすぐ破られる。
全員が精神的に極限の状態にある。
だからこそ銃を使ったシーンが非常に際立つ。
個人的にはダニーとヴィックの関係が少し微妙。
ゲイの恋愛だから感受移入できないためだからか?
そんなに深い絆なのと思ってしまった。
でもダニーの本命がヴィックでアリスを裏切る、
二重の騙しだったらまた面白かったのかもと思う。
ラストも結局アリスがギリギリで鍵に届かず助からないとか、
最悪の終わり方もありかなとダークな想いを馳せてしまった。
Monthly Archives: 6月 2011
シベールの日曜日
大人の男性と少女の純粋な恋。
こう書くと危険な匂いがするが全くの正反対。
純粋で残酷な映画。
それでもまた一度観たいと思う。
あとシベールがめちゃ可愛い。
※以下ネタバレあり
最初はピエールは少女の境遇に同情してるだけだと思った。
でもそれは同情ではなく愛情で、
もっと言ってしまえば最初に見た瞬間に一目惚れしてたのだと思う。
自分とほぼ同じ歳であるピエールが少女であるシベールに恋心を抱くのに、
最初はすごい違和感を覚えた。
彼が記憶喪失だと知ってても若干の嫌悪感があった。
でも多分それが普通の反応なのだろう。
見た目は大人なのだから”大人であるべき”と言う目で見てしまう。
事情を知ってる人ならまだしも、
知らない人からすればピエールは”大人”であるのだ。
だから二人の無邪気な恋愛を周りの大人はなかなか受け入れ難かったのだろう。
それが最後の悲劇に繋がった。
人は年を重ねれば成長するかのかと言うとそうではない。
経験を通して成長するのだ。
記憶を失ったピエールには経験が殆どない子どもと一緒なのだ。
そう考える様になってくると、
ピエールとシベールのやり取りがとても微笑ましく見えた。
シベールがピエールよりお姉さんっぽいのも、
記憶をなくしてからのピエールよりシベールの方が色々と経験してるからだろう。
マドレーヌは素晴らしい女性だ。
彼女も二人の事を理解しかけてた。
もう少し時間があればいい方向に行けたかも知れない。
彼女もまた被害者だ…
シベールの最後の台詞、
「私にはもう名前はないの。誰でもないの。」
彼女の中では父親もお婆ちゃんも存在せず、
本当の名前を知る唯一の人物はピエールだけであった。
そのピエールが死んでしまった事で、
“シベール”と言う女の子もまた存在しなくなってしまったのだ。
悲劇以外の何ものでもない。
二人があまりにも純粋であり映像もまた純真であったので、
余計に最後の悲しみが突き刺さった。
エデンの東
※ネタバレあり
「愛」ってのはいつの時代も不変のテーマなのだな。
本作には親子と男女の二つの愛が描かれてるが、
主は親子の愛。
人の育つ環境がその人の人格に与える影響は多大で、
両親の愛を受けずに育ったキャルは誰からの愛も拒絶してた。
しかしそれは本心ではなく、
ホントは愛されたいと願っていた事が話を追ってくと見えてくる。
母親を悪い人と思い自分も母親に似て悪い人だと思ったのは、
そうする事で「自分は悪い人間だから愛される価値など無い」という
言い訳が欲しかったからではないだろうか?
父親の資金を取り返すために買った大豆畑で、
大豆の成長を心待ちにする無邪気なキャルが本当の姿なのだろう。
だからこそ父親がキャルからのお金を拒否した時は本当に心が痛んだ。
父親の性格上そうすることは予想できてた。
予想はできてたが、それでもショックだ。
自分から愛される事を避けて愛されなかったのならまだ良い。
しかし今回のキャルは愛を欲したのにそれを拒絶された。
聖書を語る父親が何故そこに気付かないのか?
愛を語るものが持たなくて語らないものが持っている。
皮肉である。
一度は完全に分断されたが、
父親の死を目前にしてお互いを分かり合う事はできた。
これからキャルが生きていく上で
それがあったか無かったかの差は大きい。
意地でもその機会を作ろうとしたアブラに大感謝である。
しかしながら失ったものは大きい。
もう少し早く分かち合えてればと思うが、
誰も傷付かずに済んだのかも知れない。
そう思えるから、現実の世界の自分達は
同じ過ちを犯さない様にしようと思う。
キャルの様に愛情表現の下手な子どもは多いと思う。
表面ではなく内面を見れる様にしたい。
最後に一点。
兄貴のアロンはどうなったのだろう…
理想砕かれ彼女奪われ精神崩壊して。
哀れ過ぎる。