Category Archives: 映画

雨に唄えば

雨の降る中で歌うシーンが有名なミュージカル映画。
映画は観た事はなくとも、
タイトルくらいは聞いた事あるって人は多いのではないだろうか。
自分もそのタイプである。
午前十時からの映画祭で上映されたのを機にスクリーンで観てきた。
コメディも所々にありエンターテイメントとして楽しめる作品。
1950年代の映画なのでファッションなどには時代を感じるが、
歌やダンスは今観ても色あせない魅力がある。
別にダンスとかに詳しい訳ではないのだが、
良いものはいつになっても変わらず良いのだと思う。
タップダンスは素晴らしい。
※以下ネタバレあり
個人的には主演の二人よりもドナルドが一番好き。
彼が出ると場が盛り上がるし、何よりも楽しそうに踊る。
彼には楽しませてくれそうな雰囲気がある。
もちろんそういう役だったのかも知れないが、
そういう意味ではいい役者だと思う。
ミュージカル映画は、また他の映画と一線を画する。
ミュージカルの挿入箇所の考え方や、
シーンの切り変わりなど他の映画には無い要素だ。
だから自然と見方も変わってくる。
のめり込むというよりは、それこそステージを観てる気分になる。
娯楽として楽しめる作品だ。

パピヨン

独房でのマックイーンの演技が圧巻だった。
この時代ではまだ特殊メイクの技術も高くないだろう。
あれだけのリアリティを出すのにどれほどの努力をしたのだろうか。
そのシーンだけでも観る価値はある。
※以下ネタバレあり
独房のシーンは演技に注目が行ってしまうけど、
作品を通しても大事なシーンだったと思う。
人間の限界まで追い詰められて精神も衰弱していきながらも、
「何としても生き延びてやる」と言う生きる力、
差し入れしてくれた友人の名を絶対に明かさなかった友情、
この二つはパピヨンと言う人間がどういった人間かよく表してる。
ストーリーも他の脱走ものとは少し異なり、
脱走してからのシーンも長い。
そしてまた捕まる(笑)
脱走した時点でエンディングに向うパターンが多いのだが、
これには予想を裏切られた。
また何度失敗しても諦めない不屈の精神が良い。
老人になってしまったら、
残り少ない余生を慎ましやかに暮らそうと思うドガの考えはよく分かる。
それでも非常に危険なリスクを侵してまで、
自由を求め続けたパピヨンの生き方には胸を熱くするものがある。

SUPER 8

SUPER8
「映画好きな少年が大金使って大作を撮っちゃった」って感じの映画。
アクション、アドベンチャー、SF、ホラー、友情、恋愛、家族愛、
色んな要素を詰め込んだごった煮作品。
でもそれらの要素を適度に取り入れてうまくまとめてるのは流石だと思う。
過度な期待はせずに、
娯楽作品と言う気持ちで観ると楽しめると思う。
最後の最後まで娯楽に溢れてる。
※以下ネタバレあり
この作品をどう捉えるかで意見が別れるだろう。
これを一流の作品かと言われればそうではないと思う。
評価とか内容とか難しく考えずに、
子どもが単純な気持ちで見たら楽しめる映画だと思う。
何故なら子供心にワクワクするような要素がいっぱい詰まってるからだ。
そういう部分を前面に押し出した作品だと思う。
なのでストーリーの甘さだとか、
ベタな展開だとかそういうのはどうでも良いのだ。
「楽しんで映画を作った」そういう気持ちが感じられて、
観てるこっちも楽しかった。
その娯楽に幾ら金注ぎ込んでるんだ?
とも思ったけど、それはそれで羨ましくもあり滑稽でもある。

十二人の怒れる男

面白かった。
会話のみの展開でここまで引き込まれるとは。
陪審員であったことがより感情移入しやすくさせたと思う。
何より脚本が素晴らしい作品だ。
※以下ネタバレ
会話が中心の映画であるがぐいぐいと引き込まれて行ってしまう。
最初は唯一人しかいなかった無罪が、決を取る度に少しずつ増えてく展開は面白い。
法廷ものは有罪か無罪かを立証するやり取りそのものが非常に面白いのだが、
本作はそれが陪審員であり、人数も12人と多くそれぞれの思想も違う。
なので単純に、
無罪と主張したい側VS有罪と主張したい側
にならず、その中間に位置する人達もいる。
そこがまた法廷作品とは違った面白さを出してるのだろう。
特に自分は弁護士でもなければ検事でもない。
陪審員側の人間だ。
だから自分もその場にいる感覚で観れる。
それぞれの主張がぶつかり合う中で徐々に事件に対する考察が変わって行く。
自分がその場にいたら?
どう主張した?
どこで気持ちが変化した?
そう思いながら観るのも楽しい。
非常によくできた脚本だと思う。
名作と呼ぶに相応しい作品だ。

アリス・クリードの失踪

アリス・クリードの失踪
『アリス・クリードの失踪』公式サイト
あらすじ
ヴィックとダニーは富豪の娘アリス・クリードを誘拐すると
用意したアジトに連れ込み、手足をベッドに縛り付け監禁する。
身代金の要求額は200万ポンド。
ヴィックが周到に練り上げた計画は万事抜かりなくこのまま順調に進むかに思われたが…
感想
全体を通して一定の緊張感が保たれてて飽きることなく観れた。
終わってみれば登場人物が主要の三人だけと
低予算ながら綿密に世界観が作られてる。
低予算を狙ったのか、結果的に低予算になったのか分からないが、
たった数人の登場人物でもこれだけの映画が撮れるという好例。
※以下ネタバレ
とにかくダニーのダメっぷりが凄い。
彼が全ての元凶であり、
また彼がいなければこの誘拐は成功してたかも知れない。
「愛してるから誘拐した」とか撃たれても可笑しくないレベル。
まあ、彼がいたからこの映画が成り立つのだが…。
この映画では暴力シーンが殆どない。
簡単には暴力は使わない。
だがその境目は非常に薄い一枚の板で、
一歩間違えればすぐ破られる。
全員が精神的に極限の状態にある。
だからこそ銃を使ったシーンが非常に際立つ。
個人的にはダニーとヴィックの関係が少し微妙。
ゲイの恋愛だから感受移入できないためだからか?
そんなに深い絆なのと思ってしまった。
でもダニーの本命がヴィックでアリスを裏切る、
二重の騙しだったらまた面白かったのかもと思う。
ラストも結局アリスがギリギリで鍵に届かず助からないとか、
最悪の終わり方もありかなとダークな想いを馳せてしまった。

シベールの日曜日

大人の男性と少女の純粋な恋。
こう書くと危険な匂いがするが全くの正反対。
純粋で残酷な映画。
それでもまた一度観たいと思う。
あとシベールがめちゃ可愛い。
※以下ネタバレあり
最初はピエールは少女の境遇に同情してるだけだと思った。
でもそれは同情ではなく愛情で、
もっと言ってしまえば最初に見た瞬間に一目惚れしてたのだと思う。
自分とほぼ同じ歳であるピエールが少女であるシベールに恋心を抱くのに、
最初はすごい違和感を覚えた。
彼が記憶喪失だと知ってても若干の嫌悪感があった。
でも多分それが普通の反応なのだろう。
見た目は大人なのだから”大人であるべき”と言う目で見てしまう。
事情を知ってる人ならまだしも、
知らない人からすればピエールは”大人”であるのだ。
だから二人の無邪気な恋愛を周りの大人はなかなか受け入れ難かったのだろう。
それが最後の悲劇に繋がった。
人は年を重ねれば成長するかのかと言うとそうではない。
経験を通して成長するのだ。
記憶を失ったピエールには経験が殆どない子どもと一緒なのだ。
そう考える様になってくると、
ピエールとシベールのやり取りがとても微笑ましく見えた。
シベールがピエールよりお姉さんっぽいのも、
記憶をなくしてからのピエールよりシベールの方が色々と経験してるからだろう。
マドレーヌは素晴らしい女性だ。
彼女も二人の事を理解しかけてた。
もう少し時間があればいい方向に行けたかも知れない。
彼女もまた被害者だ…
シベールの最後の台詞、
「私にはもう名前はないの。誰でもないの。」
彼女の中では父親もお婆ちゃんも存在せず、
本当の名前を知る唯一の人物はピエールだけであった。
そのピエールが死んでしまった事で、
“シベール”と言う女の子もまた存在しなくなってしまったのだ。
悲劇以外の何ものでもない。
二人があまりにも純粋であり映像もまた純真であったので、
余計に最後の悲しみが突き刺さった。

エデンの東

※ネタバレあり

「愛」ってのはいつの時代も不変のテーマなのだな。
本作には親子と男女の二つの愛が描かれてるが、
主は親子の愛。
人の育つ環境がその人の人格に与える影響は多大で、
両親の愛を受けずに育ったキャルは誰からの愛も拒絶してた。
しかしそれは本心ではなく、
ホントは愛されたいと願っていた事が話を追ってくと見えてくる。
母親を悪い人と思い自分も母親に似て悪い人だと思ったのは、
そうする事で「自分は悪い人間だから愛される価値など無い」という
言い訳が欲しかったからではないだろうか?
父親の資金を取り返すために買った大豆畑で、
大豆の成長を心待ちにする無邪気なキャルが本当の姿なのだろう。
だからこそ父親がキャルからのお金を拒否した時は本当に心が痛んだ。
父親の性格上そうすることは予想できてた。
予想はできてたが、それでもショックだ。
自分から愛される事を避けて愛されなかったのならまだ良い。
しかし今回のキャルは愛を欲したのにそれを拒絶された。
聖書を語る父親が何故そこに気付かないのか?
愛を語るものが持たなくて語らないものが持っている。
皮肉である。
一度は完全に分断されたが、
父親の死を目前にしてお互いを分かり合う事はできた。
これからキャルが生きていく上で
それがあったか無かったかの差は大きい。
意地でもその機会を作ろうとしたアブラに大感謝である。
しかしながら失ったものは大きい。
もう少し早く分かち合えてればと思うが、
誰も傷付かずに済んだのかも知れない。
そう思えるから、現実の世界の自分達は
同じ過ちを犯さない様にしようと思う。
キャルの様に愛情表現の下手な子どもは多いと思う。
表面ではなく内面を見れる様にしたい。
最後に一点。
兄貴のアロンはどうなったのだろう…
理想砕かれ彼女奪われ精神崩壊して。
哀れ過ぎる。

ドクトル・ジバゴ

※ネタバレあり

「時代に翻弄された二人の愛」
とでも言えば良いのだろうか。
惹かれ合った二人が幾度もすれ違い、
そして結ばれる。
しかし悲しい結末を迎える。
元々ラブストーリーはあまり見ない。
ご都合主義なところが鼻につくからだ。
この作品にしたって、ユーリとラーラは4回も偶然出会っている。
4回は多い…
ラーラの夫がストレルニコフって言うのも、
話を面白くはしてるが現実的ではない。
しかしながらリアルに描写された当時の凄惨な状況が、
そう言った余計な考えを奪う。
激動の時代を愛するものの為に必死に生き抜く。
愛するものと共に生きる。
壮大な愛の物語だ。
ただ、唯一自分が感情移入できなかったのが、
妻のトーニャの存在。
夫を愛し夫に尽くし夫を信じる。
まさに理想の妻。
そんなトーニャを裏切ってラーラを選んだユーリに
心から祝福はできない。
ユーリは心優しい人間だ。
ラーラと愛し合うようになっても、
トーニャも家族も大事にした。
だからこそラーラを諦めるか、
悪い男になってトーニャを捨てて欲しかった。
中途半端は良くないよ。
却って人を傷つけてしまうこともある。
自分もそうなのでよく分かる…
最後ラーラともう一歩のとこで会えなかったのは、
そう言ったツケが回ってきたのかなと少し思った。
それでも愛に生きたユーリの人生は悪くないと思う。

太陽がいっぱい


※ネタバレあり
大好きな彼女をものにするにはあいつの存在が邪魔だ。
いっそあいつを殺害して彼女も金も全て手に入れてやる。
元からあいつは好かなかったし丁度良い。
俺は賢いから大丈夫、上手く行くさ。
恋は盲目と言うが、
そんな感じで突っ走ってしまったトム。
実際のところ彼の完全犯罪はツメが甘く、
それがきっかけで失敗するのだが。
冷静に財産だけを奪おうとしてればもう少し違ったのかも。
マルジュを手に入れたいがために、
余計な行動や感情に走った行動をしてしまう。
一見冷静に見えるが、実際は恋に溺れた狂人。
フレディを殺害した後、その部屋で冷静にチキンを食べるシーンからはトムの常軌を逸した精神状態が垣間見れる。
この映画は、一人の女性を手に入れる為なら
他人の犠牲も殺害さえも厭わないと思う人間の狂気が恐ろしい。
トムが望むものを手にし「太陽がいっぱいだ」と歓喜を味わってる状態から、
奈落の底へと堕ちる最後のシーン。
この明暗が心にずっしりと残る…。
ちなみに同原作でマット・デイモン主演の「リプリー」という映画があるが、
これは「太陽がいっぱい」のリメイクではなく、あくまで別作品らしい。
大筋は一緒なのだがその違いを比べながら観るのも面白いと思う。

明日に向って撃て!

※ネタバレあり
主演の二人ブッチとサンダンスが魅力的だ。
列車強盗や銀行強盗をする悪党でありながら、
コミカルでどこか憎めないアンチヒーロー。
銃を扱う映画でありながら、
前半では射殺するシーンは全くない。
それが二人の人柄の良さを引き出し、
故に山賊を撃つシーンが重くなる。
「人を撃ったことがない」と言ったブッチ。
スローモーションで描かれた射撃シーン。
単純なアウトローの映画ではなく、
内面にもスポットを当ててる。
しかしながらブッチとサンダンスには感情移入はできない。
いい奴らに思えるけど結局やってる事は犯罪だし。
追われるのも狙われるのも自業自得。
苦悩するのもそれだけの事をしてきたから。
だから彼らはあくまで物語の中のアンチヒーロー。
そうやって見る分には彼らはとても好きだ。
特に先日同じくポール・ニューマンとロバート・レッドフォード主演の映画「スティング」を観たばかりだったので、
二人のやり取りを観てるだけで楽しくなる。
最後のシーンだがあの形が最適だったのだと思う。
この映画では死は重いものであり、
ブッチとサンダンスにそれを表現させるのはどこか違う。
そのシーンをリアルに描くよりも、
どこかコミカルに描くのが丁度良い。