※ネタバレあり
初老の男性が美少年に一目惚れしその気持ちを秘めたまま一途に想い続ける。
これだけを聞くとあまり心惹かれないストーリーなのだが、
ゲイとかそういう類いではなく人としてのもっと深いものがある。
確かにタージオは不思議な魅力を秘めている。
精悍な顔立ちだけでなく、仕草や目線など、
こいつが女だったら非常に恐ろしいことになるなと思って観てた。
アッシェンバッハの過去にもいろいろあったようで、
場面場面がフラッシュバックで蘇る。
そういった彼のこれまでの人生と、
旅先で出会った少年によせる想いを包括的に考察するとなかなか面白いのではないだろうか?
その過去がはっきりと描写されてない方が良い。
観る者にいろんな想像を掻き立てることができるので。
僕の勝手な想像ではアッシェンバッハのこれまでの人生には”何か”が欠けていた。
それが”美”なのか”愛”なのか定かではないが、
その”何か”をタージオと出会うことで見つけたのではないだろうか。
なので彼は最後に満足して逝けたのだと思う。
またこの作品は映像がとても美しい。
切り取って一つの絵になりそうなシーンが幾つもある。
その映像と相まって最後の海に立つタージオには神々しささえ感じる。
芸術的な作品だ。