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ファニーとアレクサンデル

5時間超の大作。
観るのを躊躇したけど、章で分かれてるので短い連続ドラマを観てる感じで、一度見始めれば一気に見れる。

ひとりひとりを細かく描写してそれ故に「エクダール家」というのを表現している。
群像劇なのだが、その中でもアレクサンデルにスポットが当てられる。でも彼にスポットを当てるのなら他の人物のエピソードをそこまで広げる必要あるのかなと。
どれも中途半端な描写な気がするのだけど、そこは敢えて観てるものへ想像の余地を残すためなのか…。

映像や音楽、美術、ところどころ挿入される文学的な話、それがこの作品に優雅さを与えてるのかもしれないが、ちょっと肌に合わなかった。
でもなんかハマるとそれが良くなりそうな、変な中毒性秘めてそう。

主教のキャラが一番印象強い。
特に聖人と呼ばれる人だからこそ、闇がより際立つのだろう。
冷徹な悪魔か。
善と悪、生と死、静と動。
そういう陰と陽全てが含まれた作品。

あとファニーが可愛かった。

若者のすべて

※ネタバレあり

人は自分の理解できないものに対して恐怖を感じる。
そういう意味ではシモーネだけでなくロッコにもまた狂気を感じた。

シモーネはほんとに人間のクズだ。
けどそうさせてしまった原因のひとつはチーロの言うとおりロッソにもある。
と言うかチーロがこの兄弟の中では一番まともだと思う。

愛にはいろいろな種類がある。
恋人への愛、夫婦愛、子どもへの愛、親への愛、兄弟愛…。
自己愛もそのひとつだ。
で、どれも突出しすぎるのは危険である。
ちょうどよくが良いのだけど、いろんな人と関わり、それぞれがそれぞれの愛を持ってる中でバランスを保つのもまた難しいことなのかなと思う。

この兄弟(家族)は少し極端な例かも知れないけど、似たようなケースは世にたくあさんあるだろう。

しかしこんな多感な時期をこんな家庭で過ごしてるルーカがこれからまともに育つのかが心配になってしまった。

アンコール!!

※ネタバレあり息子や周りの人と素直に接することができず、心を開けるのは妻だけという頑固者のアーサー。

そんな夫を理解し明るく献身的に寄り添う妻のマリオン。
その姿勢は最後の最後まで変わらない。ほんとうに素敵な妻だと思う。
彼女が歌ったtrue colorsほど心に刺さるtrue colorsは聴けないだろう。

その歌を聞いた後のアーサーの行動もすごいよく理解できる。
ああいう時にどんな顔をしたら良いのか分からないのだろう。
そんな性格だからずっと変わることなく生きてきたけど、
マリオンの死をきっかけに少しずつ変わろうとする。
最初はどう振る舞っていいか分からず、笑顔もぎこちないのだけど
少しずつ笑顔も自然になってくのがいい。

人が変わるってのはそう簡単なことでなく、
うまくいかないことがあり挫折しそうになった時もあるけどそれでもアーサーは一歩を踏み出した。
最終的に彼がそこまで行動できたのも全て愛ゆえにだろう。

ここ最近見た映画の中で一番泣いた。
何度も涙腺崩壊した。

家族の愛や夫婦愛、何かに踏み出す勇気、そういったものを感じさせてくれる作品だ。

或る夜の出来事

※ネタバレあり

世間知らずの富豪のお嬢様とワイルドで破天荒な男が出会っちゃったら、
これは恋に落ちる展開でしょう。

その予想裏切らずは恋に落ちるのだけど、
我慢できず自ら告っちゃうあたりホント自由奔放だなと。
で、そんな彼女とはうまくいかないと理性で判断するあたり、
はリアリストだなと。

そんなリアリストなも結局恋に落ちちゃうのだけど。
まあ、あんな女性と一緒にいたらそうなるのも無理もない。

そんなんでうまく行くかと思いきやひと波乱あって、
で最後にハッピーエンドという楽しく安心してれるラブロマンス作品。

私のように美しい娘

清々しいほどの悪女。
でもコメディタッチなので見てて腹が立つとかではなく笑えてくる。
その笑いには「男ってバカだな」と思いつつ、
同じ男として自分気持ちが分からんでもないという
苦笑も含まれてる。
ぶっちゃけこの女優さんは好みじゃないのだけど、
仕草や雰囲気で惹かれてしまうところはある。
フェロモンは外見からだけ出てるものではないのだ。

夏の嵐

※ネタバレあり
ダメな男に惚れ込んで最終的にどちらも身を滅ぼすのは恋愛によくある展開で、
それの豪華絢爛版といったところか。
フランツは本当の最低の男だ。
最後の結末も自業自得としか言いようがない。
リヴィアは?
最終的には全てを失ってしまったのだが、
こちらもやはり自業自得ではないだろうか?
悪いことと知りながらも大事な資金をフランツに差し出す。
それまではまだ恋に溺れたしょうがない人として見れたが、
そのシーン以降は嫌悪感すら抱いた。
もしかしたらフランツも、最初は騙すつもりなどなかったが、
あまりにリヴィアが全てを与えてくれるから
それで段々欲が出てきたのではとも思った。
まあ、本編を見る限りそれはないのだが、
そうであってもおかしくはない。
このような自分さえ良ければ的なのは愛とは言わないと思う。
残念ながら僕はこういうのには全く感情移入できない。
それ程の激情のような恋愛をしてないからなのかも知れないけど。
人によっては共感でき、ハッとすることのある作品ではなかろうか。

マスター・オブ・リアル・カンフー/大地無限

※ネタバレあり
香港のカンフー映画にしては割かしストーリーがしっかりしている。
とは言え突っ込みどころは豊富なのだけど。
出てくる主要なキャストが、男女問わず武術の使い手なのはこの手の作品にはよくある設定。
やはりメインはアクションシーンだ。
個人的に面白かったアクションシーンは、
少林寺での大乱闘と、チャウシュを救いに行った時のティンボウとの差しの闘い、
が太極拳を見出す時だ。
少林寺での乱闘は鮮やかな棒術が見どころ。
ティンボウとの差しの闘いは力が拮抗してて面白い。
太極拳を見出すまではストーリーと相まって、
新しい武術を開眼してく様が面白い。
また動きが美しい。
ラストもいいのだけど、クワンボウの方が頭一つ勝ってしまっているので
他のアクションシーンよりは見劣りしてしまった。
全体を通してカンフー映画の中でも上位に食い込む。

ベニスに死す

※ネタバレあり
初老の男性が美少年に一目惚れしその気持ちを秘めたまま一途に想い続ける。
これだけを聞くとあまり心惹かれないストーリーなのだが、
ゲイとかそういう類いではなく人としてのもっと深いものがある。
確かにタージオは不思議な魅力を秘めている。
精悍な顔立ちだけでなく、仕草や目線など、
こいつが女だったら非常に恐ろしいことになるなと思って観てた。
アッシェンバッハの過去にもいろいろあったようで、
場面場面がフラッシュバックで蘇る。
そういった彼のこれまでの人生と、
旅先で出会った少年によせる想いを包括的に考察するとなかなか面白いのではないだろうか?
その過去がはっきりと描写されてない方が良い。
観る者にいろんな想像を掻き立てることができるので。
僕の勝手な想像ではアッシェンバッハのこれまでの人生には”何か”が欠けていた。
それが”美”なのか”愛”なのか定かではないが、
その”何か”をタージオと出会うことで見つけたのではないだろうか。
なので彼は最後に満足して逝けたのだと思う。
またこの作品は映像がとても美しい。
切り取って一つの絵になりそうなシーンが幾つもある。
その映像と相まって最後の海に立つタージオには神々しささえ感じる。
芸術的な作品だ。

アデルの恋の物語

※ネタバレあり
実話を元にした映画。
この物語の主人公アデルは文豪ビクトル・ユゴーの娘である。
有名人の娘であり華やかな生活を送ってるのかと言えば、
全く逆で愛に溺れて破滅していく様が描かれている。
簡潔に言い表すなら、恋を成就できなかったストーカーが精神を病んで精神病院で一生を終えるという話。
その崩壊っぷりを見事に表現したイザベルの演技も見所か。
個人的には全く受け入れられない。
人を一途に想う。
それに関しては素晴らしいことだと思うが、
相手のこと、周りのことを一切考えず
自分の愛を受け入れさせようとするエゴイストっぷりには怒りすら感じる。
しかしピンソンの婚約を破棄させたり、虚実の婚約を発表したり、
人の人生を大きく狂わせるほどの行動をしておきながら、
それが正しいことだと思えてしまえる人の思想を変えるのは容易ではないだろう。
そんな女性に惚れられたピンソンが不運としか言いようがない。
もしかしたらピンソンにも原因があったのかも知れないが、
二人が恋に落ちた部分は描かれてないのでそれは分からない。
愛は素晴らしいものだけど、
一つ間違えれば狂気にもなるなんとも恐ろしいものだ。

天井桟敷の人々

古典文学のような香りがした映画だ。
「運命」という言葉が思い浮かぶ。
それは良い時も悪いときも使われるが、
ここでは後者の方だ。
あの時ああしていれば
あの時こうしていれば
ちょっとずつズレた歯車は二度と噛み合うことはない。
人生とは多かれ少なかれこのようにうまくいかない事がある。
この作品にはフィクションにありがちなご都合主義はない。
ただリアルに、過去の選択が重くのしかかる。
ひとつひとつの選択で人生は変化していき、
それがどのような形になろうとも
その中で希望を見つけてただ生きてくしかない。
それもまた人生なんだなと思った。
この作品は本当に人間の心理がよく描かれていると思った。
またパントマイムも一見の価値あり。
無言でここまで情景や感情を表現できるのかと感動する。
同じパントマイムでもチャップリンとはまた感じが違う。