天井桟敷の人々

古典文学のような香りがした映画だ。
「運命」という言葉が思い浮かぶ。
それは良い時も悪いときも使われるが、
ここでは後者の方だ。
あの時ああしていれば
あの時こうしていれば
ちょっとずつズレた歯車は二度と噛み合うことはない。
人生とは多かれ少なかれこのようにうまくいかない事がある。
この作品にはフィクションにありがちなご都合主義はない。
ただリアルに、過去の選択が重くのしかかる。
ひとつひとつの選択で人生は変化していき、
それがどのような形になろうとも
その中で希望を見つけてただ生きてくしかない。
それもまた人生なんだなと思った。
この作品は本当に人間の心理がよく描かれていると思った。
またパントマイムも一見の価値あり。
無言でここまで情景や感情を表現できるのかと感動する。
同じパントマイムでもチャップリンとはまた感じが違う。

鉄道員

※ネタバレあり
「家族」がテーマの映画。
家庭が少しずつ崩壊していくが、
また再び絆を取り戻すという内容。
名作の一つとして挙げられるが、僕はそこまでのめり込めなかった。
と言うのもそこまで崩壊するような家庭に思えなかった。
機関士の父アンドレアは家族には厳しく見えるが
優しい人間だと言うのが最初から見て取れたからだ。
当時としては新しい内容の映画だったのかも知れない。
現在ではもっと酷い家族の話や作品を目にする機会が多いので、
その辺の感覚が違うからかも知れない。
またジュリアやマルチェロが父を許した動機は描かれていない。
時間が解決した。そのような意味だろうか。
実際にはそうであることが多いのかも知れない。
ただ映画としては物足りなさを感じてしまった。
もっと彼らが心変わりする”何か”が欲しかった気がする。
個人的にはもっと内面描写が欲しかったと思うが、
そこまでしたらこの映画は全く別の作品になってしまうのかもとも思う。
家庭を持つ様になったらまた違った視点で観れるのかも知れない。
その頃にもう一度観たい。
僕の中で一番感動したシーンは、
スト破りとなってから独りになったアンドレアが酒場に戻った時
仲間達が何も言わずいつも通り迎えてくれたシーンだ。
それは彼の人望だ。
男としてカッコいいじゃないか。